日常的に5つのビデオ会議サービスを使う私の使用パターン・使い分け

2020.05.13

ベルリンのしがひです。テレワーク全盛の昨今、どのビデオ会議システムを使うか、優れているか、というのは議論あるところだと思います。

フルリモートで世界各国の取引先と通信する私の仕事では、相手、用途、シーンに合わせて5つのビデオ会議サービスを使っています。サービスの優劣ではなく、どういう使用パターンで使い分けているのか、参考にしていただければ幸いです。

サービスの分類

私が使っているビデオ会議サービスは、Slack Call、Google Meet、Microsoft Teams、Zoom、Amazon Chime です。それぞれの性格から、3つに分類することができます。

  • チャット系 -- Slack Call
  • グループウェア系 -- Google Meet、Microsoft Teams
  • カンファレンス系 -- Zoom、Amazon Chime

機能面ではどのサービスも似通っていてどんな場合でも1つのサービスで通すことはそれほど難しくはありません。むしろ参加方法、参加してもらう方法、参加者の種類、環境によって使用パターンが出てきます。

チャット系

現在、クラスメソッドは世界各地のオフィスでSlackを共通のチャット基盤として使っています。お客様へのシングルゲストチャネルや個別ワークスペースの提供・共有もあり、必ずしも内向けのみのツールというわけではありません。

ベルリンオフィスは日本の本社・グループがChatworkからSlackへツールを切り替えるよりかなり前からSlackをメインに使っており、おそらくSlack Callの使用頻度は日本よりも多いはずです。

Slack Call

ほとんどの場合、1対1のインスタントコールで使います。チャットでのやりとり中に、直接話をした方が早そうな場合に非同期から同期通信へ切り替える形で始めます。

外向けの場合はワークスペース内での少人数のグループ通話になることが多いです。

Slack Callの利点

  • 利用者の端末にクライアントがインストールされているため、システムトラブルになることが少ない。

少人数のクローズドなインスタントコールでは、この確実性と開始までの早さが強みになります。モバイルへもプッシュで通知(呼び鈴がなる)されるため、「話を始めるまで相手や参加者を待つ」時間が極めて短くなります。

  • ホワイトボード機能にアクセスしやすい。

画面共有した際に相手が手軽にお絵かきをする形で指摘や質問をすることができるため、非同期のチャットに比べて全体のコミュニケーションコストが低くなります。

Slack Callの制限

  • コンタクトできるのはワークスペース内のユーザー・ゲストユーザーに限られる。

大人数(Video callは最大10名)や初対面のCallには使えません。

  • 何日の何時からというスケジューリングをしたい場合には向かない。(API、Botを利用するなど方法はあります)

チャットなしにいきなりCallすると相手の仕事の中断につながってしまうため、「いまちょっとしゃべれますか?」でもいいので、上の例の様にチャットで簡単なスケジューリングをしてインスタントコールという運用になります。

グループウェア系

メール、カレンダー、コンタクトに統合されているグループウェア系ビデオ会議はサブスクリプションがあるならば迷わず使うツールですし、こんにち、G SuiteかOffice 365のどちらかを使っているという企業が多いと思います。

ベルリンオフィスのグループウェアはOffice 365なのでMicrosoft Teamsを使っていますが、日本の本社はG SuiteなのでGoogle Meetも使います。

Google Meet

日本からイニシエートされた会議に出席する場合に使います。

またベルリンオフィスにある会議システムとしてロケーション登録されているChrome Boxがあるため、会議室 対 会議室 or デスクトップ というパターンでも使用します。そのためオフィスにいる人とリモートユーザーをつなぐ週次ミーティングは、ベルリンの中だけであってもGoogle Meetを使っています。

Google Meetの利点

  • 端末クライアントが想定されていないWebクライアント(ブラウザ)前提のサービス。

初対面の組織外ユーザーが参加するときの障壁が低いです。

  • カレンダーとの統合。

会議依頼をカレンダーから送ってイニシエートするため、スケジュールが確実。

  • 参加者の制限、同定が手軽にできる。

Google IDやG SuiteのIDでのログイン参加が可能で、入ってきた初めてのゲストユーザーをホストが許可するまで参加させない制限など、Bombingにあらかたの耐性があります。

  • Chromeタブの画面共有。

画面共有オプションでChromeのタブごとの表示ができるため、動画の表示などが手軽です。

  • 大人数の画像表示。

最近のアップデートでタイル表示が4人から16人に増えました。またChrome拡張のGoogle Meet Grid Viewで50人程度までの一覧表示に対応しています。

  • 安価な会議室カメラが設置できる。

Web会議サービスの会議室への導入はPolycomやCiscoなどのサポートされている連携機器を設置する必要がありますが、Chrome boxにWebカメラをつけるだけでロケーション登録できる会議室を作ることができます。

Google Meetの制限

  • Unmute禁止がまだ実装されていない。

これは私の子のリモート授業で問題になったのですが、ホストが一斉MuteをかけてもゲストがUnmuteできるため、参加者を追放しない限りアビューズが起こりえます。これはロールアウトプランにあるため、近日中に実装される可能性はあります。

  • ミーティングルームのパスワードロックができない。

簡易的なパスワードロックによるミーティングルームが作成できないため、初見ユーザーをロビーで待機させている場合はホストがマニュアルで一人一人入室許可しなければならず、大人数のWebinarを開催する場合はコンタクトの事前登録でログインを求めるなどの対処が必要です。

  • Hangouts時代からデグレードされた機能がある。

Googleのサービスは突然の開発停止が結構あり、製品ロードマップに信頼が置きづらいところがあります。

ビデオ会議も、かつては非公開ステータスのYoutube LiveをHangoutsから起動するHangout onairというオプションがあり、社内勉強会の開催とその録画・シェアが簡単だったのですが、MeetとYoutube Studioへの移行の過程でひっそりと消されました。

Microsoft Teams

ベルリンオフィスのメインのWeb会議サービスです。Google Meetと利点の多くは共通していますが、グループウェア・オフィススイートとしての統合具合の高さと、Azure ADの基礎的な機能がOffice 365のサブスクリプションに含まれる点でやや分があると感じています。

Microsoft Teamsの利点

  • 外部ユーザーの認可、認証と共通基盤の作成。

元々Slackの様なコミュニケーション基盤としてのコンセプトがあるため、ゲストアクセス機能を使う事で、Call、ファイル共有、Wikiといった共通基盤になる「Team」(認可は付属しているAzure ADに自動登録する形)を形成することができます。

また外部ユーザーのフェデレーションに対応しているため、Office365ユーザー企業同士が信頼関係を結んで通信することが可能で、ゲストアクセスとフェデレーションは併用することもできます。

  • テレフォニー統合に一日の長がある。

Netmeeting、Live Communications Server、Office Communicator、Lync、Skype for Businessと、Microsoftのビデオコミュニケーションソフトウェアの歴史は長く、SBCを利用したSIPトランキングとの統合は10年以上の実績があります。私は前職で、会社の地域局番電話番号をIP Phone用SIPクライアントではなく、デスクトップ、モバイルともにLync、Skype for Businessに収容していました。

Microsoft Teamsの制限

  • Webクライアントの機能、性能に制限がある。

Google Meetと同じくブラウザベースで多くのコトは足りますが、いくつかの機能が端末クライアントのみに寄せられているため、実際にはソフトウェアをダウンロード、インストールして使うことになります。初回、初見の組織外ユーザーをいきなり会議依頼で参加させるにはMeetに比べてハードルが高いです。

  • Zoom後追いの機能実装がやや遅い。

Meetと同様に現在の制限事項になっている会議室のパスワードロック、タイル表示の拡張、Unmute禁止など、Zoomをベンチマークとしたパクり機能実装が進められていますが、この2、3ヶ月の状況を見る限りではやや遅いです。背景のボカシ、入れ替えは随分前からできていたのですが。

カンファレンス系

過去のビデオ会議を振り返ると、MPLSのQoSを前提にした会議室を繋ぐタイプのCiscoやPolycomのハードウェア・システムが臨場感を競ってその市場を作ってきたわけですが、WebEXやArkadinの登場でWeb会議との垣根が取り払われ、チャット、グループウェアを巻き込んでスコープが広がっていきました。

-- G7のビデオ会議にはTelepresence Precision cameraとWebEx Rooms integrationが使われていました。 --

カンファレンス系と私が呼ぶサービスは、WebEXをベンチマークにした組織外ユーザーとのビデオ会議用に設計されたもので、Webinarなどの多数の参加者が想定されています。

Zoom

現在、ビデオ会議依頼でWebEXの招待を受けることはまれで、カンファレンス系はZoomが席巻しています。

長い歴史と数々の競合製品がある中で、元WebEXのエンジニアによって創業されたZoomがあっという間に市場を取ったことをフリーミアム戦略やマーケティングで説明しようとする人は多いですが、私は単にソフトウェアの出来がとても良かったからだと思います。これは一見レッドオーシャンに見える市場で新たにシェアを取ったLINEやSlackにも言えることです。

ベルリンオフィスではサブスクリプションを持っていないため、Zoomで会議をホストすることはありませんが、ゲストとして特にパートナーとのミーティングで昔から多用しています。また、現在クラスメソッドの週次全社朝礼は横田のProプランサブスクリプションでホストしたZoomで実施されています。

Zoomの利点

  • 1000人規模のビデオ会議開催。

他のWeb会議サービスが250人を参加上限にしている中、最大1000人の参加と49までのタイル表示が可能です。これは3000人の参加が可能なWebEX EventsをのぞいてZoomが唯一のサービスであり、現実解です。

週次全社朝礼はProサブスクリプションに500人オプションをつけた8,700円/月で運用されているようですが、実際にはこれ以上になるとYoutube Liveなどの片方向ストリーミングを検討する段階に入ると思います。

  • 範囲選択画面共有。

画面全体やWindow・タブ単位の他に、矩形選択で使用しているディスプレイの一部を共有することができます。ワンオペのWebinarやWebプレゼンで威力を発揮します。

Zoomの制限

  • サブスクリプションが高額。

全社的な標準会議ツールとしてZoomを使うとなると意外と費用がかかります。グループウェア系と違って別途契約をしなければならないサービスですが、シングルサインオンやフェデレーションで利用するためのBusiness Planは10ホスト27,000円/月〜になり、トライアルライセンスの提供はなく、PoCをやるにもこれを買うしかありません。

  • 実質、端末クライアント依存のサービス。

特にMacユーザーはかなりチートな方法でクライアントをインストールされるため、Webクライアントの存在を知らない人も多いかと思います。

普及が進み多くの端末にクライアントが入っているため問題になりにくくなっていますが、Meetのような初見ゲストへの障壁の低さはありません。

  • 軽視できないセキュリティ問題。

急速に普及しているため「まあいいじゃないか」という空気がSNSを中心に醸成されていることに驚きますが、企業がツールとして使うにあたって、数々露見しているZoomのセキュリティ問題は軽視すべきではなく、なし崩しではなくポリシーに従って導入、管理する必要があります。

Zoomがしばらくの間セキュリティ問題の解決に注力するというコミットメントを出していて、少なくとも致命的な問題はクライアントのアップデートで埋めることは可能です。ただ、以下のことは事実として忘却してはいけません。

Amazon Chime

クラスメソッドの本社でもAmazon Chimeはそれほど積極的に使われているサービスではありませんが、最近、にわかにファンがあらわれつつあります

ベルリンオフィスでは、通常、ホストとしてTeamsを使いますが、WebinarやWebプレゼンでは以下の利点からChimeを使っています。

Amazon Chimeの利点

  • Webクライアントでゲストの機能が充足されている。

Chimeは端末クライアントが用意されていますが、Webクライアントの性能が良く、使用に足りるため、Meetと同じく初見の組織外ユーザーを招待するハードルが低いです。またカンファレンス系の基本である会議室のパスワードロックに対応しています。

  • 従量課金。

最低ホスト数や月間サブスクリプションの強制がなく、ホストができるProプランは3ドル/日、月間上限15ドルの従量課金で利用できます。また現在Proプランの無料期間が長くなっていますが、通常時でも30日間のトライアルライセンスがあるため、SIのPoCが手軽にできます。

  • 他ツールとの柔軟な連携。

Office365、G Suite向けのコンタクト・カレンダー連携がすぐにできるように準備されているので、スケジューリングと会議依頼の送付がグループウェア系サービスと遜色なく行えます。また、SlackからChimeを起動する連携サービスも3クリックで実装可能です。

  • リージョン指定とビルトインセキュリティ。

システムのホスト先を都度AWSのリージョンから選択できるため、用途、参加者に合わせてパフォーマンス確保ができるほか、AES 256によるend to end暗号化は実装済み、CloudTrail統合によるモニタリング、Active DirectoryやIDPによるユーザー管理とSSOなど、Proプランのサブスクリプションでビルトインされている企業向け機能が充実しています。

Amazon Chimeの制限

  • 最大参加人数250。

Zoomと違って1000人規模のカンファレンスはできません。ただしProプランで250人まで参加できるので料金的には妥当です。

  • ホワイトボード機能が非標準。

ホワイトボード機能がデバイス連携のDolby Voice Roomに依存しているため、通常のサブスクリプションのみでは使用できません。

  • 音声遅延の処理方法が独特。

ほとんどのWeb会議サービスが、参加者のネットワークパフォーマンスに起因する音声の遅延を瞬断で追いつかせるのに対して、Chimeは音を伸ばすような独特の処理で見た目、聞いた感じの継続性を確保します。好みの問題ですが、初めて遭遇すると違和感があります。

 


いかがでしたでしょうか?あくまで使用パターン、シーンを比較したので、なにが一番いいという結論はそもそもの論旨に反するので出しませんが、みなさんもう少しAmazon Chimeの使い勝手の良さに気づいて欲しいと願っています。