【レポート】ゲームの売上を伸ばすためのデータ分析・機械学習・データ分析基盤構築の重要ポイントとは #CEDEC2023 #classmethod_game

CEDEC2023の『ゲームの売上を伸ばす:データ分析や機械学習の活用事例とデータ基盤構築方法の紹介』を聴講して、 ゲームの売り上げを伸ばすためにはどのような点に重きをおいてデータ分析や機械学習・データ分析基盤構築を行う必要があるのかについて学ぶことができました。
2023.08.30

データアナリティクス事業本部 機械学習チームの鈴木です。

CEDEC2023に参加してきました。 聴講したセッション『ゲームの売上を伸ばす:データ分析や機械学習の活用事例とデータ基盤構築方法の紹介』についてレポートします。

澪標アナリティクス株式会社様でご対応されたデータ分析や機械学習事例と、シンキングデータ株式会社様で提供されているゲームに特化したユーザー行動分析プラットフォームデータであるThinkingEngineの紹介を通して、ゲームを対象としてデータを活用する際にどのような点をポイントとするとよいか非常に分かりやすく学ぶことができました。

セッション概要

ゲーム業界におけるAI活用およびデータ分析・施策反映支援を行っている澪標アナリティクス(以下、澪標)の代表取締役・井原氏をゲストとしてお招きし、ゲームに特化したデータ分析ソリューションを提供するシンキングデータの分析モデル・分析方法、活用施策等をご紹介いたします。

ゲーム業界におけるデータ分析や機械学習事例および、カスタマー360の観点で複数のタイトル、イベント等様々なデータを統合するためのデータ基盤の構築方法の紹介まで、2社の見解と経験に基づく実践的な具体事例を体感いただけます。

澪標では、行動ログを活用した、最小の時間を使ってのユーザー離脱予測・課金確率の予測、特定地域の売上不調原因の調査、ユーザー復帰企画に向けたデータ分析事例等、様々なビジネス課題を解決するために、データ分析や機械学習を用いた解決を行っています。

また、シンキングデータからはゲームに特化したデータ分析基盤の構築についてお話しします。ユーザー一人一人までの深掘り分析を実現するデータテーブルの持ち方や、ゲーム業界で活用すべき分析モデルや分析手法・分析結果を施策に活用する利用先までご説明いたします。

データ分析から得られる知見を活用し、ユーザーの気持ちを理解する事で、満足度UP、DAU・売上UPを体感したい方にご満足いただけるセッションとなっております。

※ 「ゲームの売上を伸ばす:データ分析や機械学習の活用事例とデータ基盤構築方法の紹介」セッションページより引用

データ分析や機械学習事例とThinkingEngineの説明を通して、ゲームのデータを活用する経験の中で培った非常に重要なエッセンスをご紹介頂きました。この記事ではポイントと感じた点を中心にご紹介できればと思います。

ポイントと感じた点

データ分析によるビジネス課題解決のための効果的なPDCAの実施

前半の発表では、ビジネス課題に対する仮説を検証するためにデータ分析を行い、その結果によって課題解決のためのPDCAを効果的に回していくべきということが、発表の大きなポイントだったと感じました。

具体的な一つの方法としては、分析結果を出した後、ゲームの企画メンバーがイメージできる「では具体的にどのようなことをすればいいのか?」の例を1つ以上提示できるようにすることが、より効果的にビジネス課題解決を解決するキーになることを学びました。

いくつかの事例をご紹介頂きましたが、特に上記の点が分かりやすかったものをピックアップして触れられればと思います。データ分析手法を具体的にどう適用したかは重要なものの、分析結果をどのように解釈したり、どのようにゲームの仕様を修正する施策に繋げたかが参考になりました。

解釈可能な手法によって結果から判断できるようにする

決定木をモデルとしてできたモデルを解釈し、ゲーム企画メンバーと結果について討議することでゲーム仕様の改善に繋げた例として、新規の継続離脱分析を紹介頂きました。

決定木を使う上でのポイントは以下でした。

  • 「こういう行動が影響しているのではないか」という要因を100-200くらい変数として立て決定木を作成し、できたモデルによって重要度を測る。
  • 決定木はモデルの根拠が分かりやすく、ゲーム企画メンバーと一緒に討議しやすい。
  • 一度当たり前の結果も出し、もし当たり前だと思っているものが出てこなかった場合は大きな発見として注目する。もし仮説通りであればその変数を外してモデルを再作成し、新しい洞察を見つける。

決定気による分析例

当たり前と思っている結果が出ることも一度確認する必要性は、以下の国外でのユーザー離脱防止の例を紹介頂きました。ある国ではあるゲームタイトルの人気がないという仮説に対して分析をしたところ、その国の離脱予測モデルに対する影響はなく、「カードを進化させたかどうか」が大きな影響を持っていることが分かった例でした。

国外でのユーザー離脱防止

ゲーム企画者とディスカッションする中で、カードを進化させるとレベルがリセットされる仕様があることが分かり、当時の国外のユーザーには喜ばれていなかったために、その仕様を修正することで売り上げを向上させることができたそうです。

機械学習のブラックボックス性と性能のトレードオフを考える

機械学習を使い、「このユーザーが解約したいと思っているだろうな」と運営側が判断したタイミングでクーポンを送ることで、有料課金転換率を20%引き上げることができた例です。このケースでは、ブラックボックスでもいいのでとにかく離脱してしまいそうなお客様にアプローチしたいという企画側の思いがありました。

離脱予測の例

キャンペーン動画配信効果分析のリードタイム短縮のため、機械学習を使った例も参考になりました。広告開始後7日間の行動を使って90日後LTVを機械学習で予測し、課金してくれそうか予測した結果を広告効果の評価に使ったそうです。

広告配信最適化により利益の最大化

機械学習の予測には不確実性があるものの、90日待たずして最短7日で評価が実行可能なため、効果確認のリードタイムを大幅に短縮し、PDCAサイクルを早く回せるようにしたことで、大きく売上に寄与できたそうです。

条件を補正してより厳密に効果を測定する

データの条件を補正し、より様々なユーザーの声をプロダクトに反映するための取り組みとして、重みづけアンケートの例をご紹介頂きました。

ゲームのアンケートを取る際、「実は不満がある人はアンケート回答率もゲーム継続率は高く、離脱するユーザーはそもそもアンケートに答えてくれない」ということは、ゲームを含めサービスを開発する方なら誰しもが暗に感じていることだと思います。

これは一般的に言える傾向で、アンケート結果を元に声の多い要望に対応していくと、ヘビーユーザーにばかり最適化されてしまいます。これを回避するため、ユーザーの行動からそのユーザーがどのようなユーザーなのか判断してアンケート回答の重みを補正し、さらにグラフィカルネットワークを構築して満足度に対して間接的に影響がある要因を明らかにしたという例でした。

重みづけアンケート

ThinkingEngineの特徴に見る、データを使えるようにするためのポイント

後半の発表では、ThinkingData様より、ゲームに特化したユーザー行動分析プラットフォームデータであるThinkingEngineの紹介がありました。ThinkingEngineの特徴と、なぜそのような設計にしているのかという考え方から、データを使えるようにするためのポイントを学びました。

ThinkingEngineは、ゲームに関するデータの収集から蓄積・可視化までをワンストップで実現できるユーザー行動分析プラットフォームです。

目指す世界観

そもそもデータを取り巻く課題には以下の4つがあります。今回は「データが使えない問題」について特にフォーカスして、課題の詳細とThinkingEngineの強みをご紹介頂きました。

データを取り巻く課題

データが使えないケースの代表的な例として4パターンを紹介頂きました。データの形式の不一致や識別子の不在など、誰もが業務内で非常によく直面する課題です。

データが使えないケースの代表的な4パターン

ゲーム業界で一般的なデータ分析ニーズと、それがどういったレベルでどのような設計上のポイントがあるのかについてまとめられています。分析レベルによって実はデータに課されるルールの要件が異なっており、分析のためには事前にデータルールをよく設計した上で収集・蓄積しておく必要があることが分かります。

分析ニーズの整理

データ分析基盤の設計ってたくさん考慮する観点があるんだなという印象を持ってしまうかもしれませんが、データが使えなくならないために押さえるべき4観点を紹介頂きました。ThinkingEngineの考え方を理解する上ではもちろんのこと、データ分析基盤やソフトウェアの設計の中で非常に重要な観点だと思いました。

気を付けるべき観点

ThinkingEngineを使うことにより、これらの観点を仕組みとして押さえることができます。

以下は、ThinkingEngineで提供している機能の一例です。プラットフォーム側の仕組みで押さえられることでシステムとしてデータに守らせたいルールを強力に実現することができ、ゲーム開発・運営の現場で非常に活躍すると思います。

ユーザーを捉え、深い分析ニーズに応えるための機能

  • ユーザー識別子を含むJSONのみDBに受け入れる
  • ユーザーのコホート・タグを設定し、柔軟なユーザーセグメント定義ができる
  • ドリルダウンによりユーザーの詳細・行動を確認できる分析機能をサポートしている

ユーザーを捉えられるか

深い分析ニーズに耐えられるか

データ定義を一貫させるための機能

  • スキーマフリーと、個々のデータの持つ項目のデータ型の一貫性を両立している
  • ダッシュボード上でKPIの定義を決定しておける
  • 為替の換算(通貨や、どのタイミングのレートなのかなど)をダッシュボード上で適用できる

データ定義がブレないか

データガバナンスの機能

  • データのデータ型・イベントとプロパティの関係性をダッシュボード上で可視化できる
  • 分析ニーズに基づいて、どんなデータを取ればよいかデータプランを提供している
  • セキュリティ機能(エラーデータ・デバックモード)のサポート

データガバナンスが十分か

最後に

CEDEC2023の『ゲームの売上を伸ばす:データ分析や機械学習の活用事例とデータ基盤構築方法の紹介』セッションのレポートでした。

お二人のデータ活用のご経験の中から、非常に重要なエッセンスを取り出して紹介して頂けたセッションだと感じました。セッションから学んだゲームデータ活用の重要観点を押さえ、日々の分析活動やデータ分析基盤構築に活かしていければと思います。