ワーケーションを1年間で159日間やって変わった3つの価値観

ワーケーションを1年間で159日間やって変わった3つの価値観

ワーケーションを通じて地方で感じたこと、考えたことを書いています。皆様の参考になれば幸いです。
Clock Icon2022.10.03

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

WINEをこよなく愛するネクストモードの里見です。

2020年7月、NTT東日本とクラスメソッドでネクストモードを設立して以来、ワーケーションを続けてきました。「クラウドであたらしい働き方を」という会社のビジョンを自ら実践してみようと思い、気が付けば昨年は159日間(2021年7月~2022年6月)、様々な場所で働いてきました。

今回は、ワーケーションをする中で、自分でも思いがけなく変わっていた価値観について書かせていただきます。

  1.  1年間のワーケーション歴
  2.  ①出会いの場所 ワーケーションで変わった3つの価値観
  3.  ②地域の発見 ワーケーションで変わった3つの価値観
  4.  ③働く場所の充実 ワーケーションで変わった3つの価値観
  5.  終わりに

1.1年間のワーケーション歴

2020年7月にネクストモードという会社を設立して、初年度は1年で136日ワーケーションをしてきました。

北海道の鶴居村では、村で出会った方にネクストモードで働いていただくことになり、包括協定も結ばせていただきました。ワーケーションが生活の一部になっていて、ワーケーション“達人”として北海道新聞に紹介いただき、登壇でいろんな地域で話をさせていただきました。

  • 7月2日~7月15日 沖縄県石垣島
  • 7月21日~7月23日 山梨県富士山
  • 8月5日~8月11日 北海道鶴居村
  • 9月9日~9月12日 長野県松本市
  • 10月5日~10月20日 沖縄県石垣島
  • 11月3日~11月14日 沖縄県石垣島
  • 11月21日~11月25日 岩手県宮古市
  • 12月4日~12月11日 高知県日高村
  • 12月15日~12月22日 沖縄県石垣島
  • 1月7日~1月9日 群馬県四万温泉
  • 1月12日~1月16 北海道鶴居村
  • 1月16日~22日 北海道釧路市
  • 1月28日~1月31日 高知県日高村
  • 2月12日 長野県駒ヶ根市
  • 2月16日~2月20日 沖縄県石垣島
  • 2月23日~2月25日 宮城県仙台市
  • 2月26日~3月1日 大阪府大阪市
  • 3月8日~3月15日 鹿児島県奄美大島
  • 3月19日~3月20日 長野県駒ヶ根市
  • 4月1日~4月6日 高知県日高村
  • 4月15日~23日 広島県尾道市
  • 4月29日~5月1日 長野県駒ヶ根市
  • 5月7日~5月8日 北海道札幌市
  • 5月8日~5月11日 北海道大空町
  • 5月14日~5月15日 北海道鶴居村
  • 5月19日~5月22日 北海道大空町
  • 5月28日~6月12日 沖縄県石垣島
  • 6月15日~6月18日 長崎県~福岡県
  • 6月19日~6月21日 青森県青森市
  • 6月24日~7月17日 高知県日高村

2022年7月1日 鶴居村との包括協定を締結

2020年7月から13回、合計で80日以上のワーケーションを鶴居村で実施する中で、包括協定を結ぶことになりました。

2.①出会いの場所 

ワーケーションで変わった3つの価値観のひとつめは、出会いの場所です。滞在型のワーケーションでは、実に様々な方に出会うことができました。

今年は何度か、東京でなかなか会えないビジネスで繋がりがある方々と西表島の「しまおとや」に集合しました仕事とプライベートを同じ空間で過ごすことで、お互いの課題を共有し、シンパシーを得ることができます。

飲食店が近くになくても、共有スペースが広ければ泡盛と地元の肴を持ち寄って「ゆんたく」ができます。単なる観光客ではないので、一緒に料理を作ってチームビルディングをする体験も貴重でした。交流できる広いスペースは、仕事をする際にもWEB会議がしやすく、リピーターを呼ぶのかもしれません。

https://hidakawanowakai.shop-pro.jp/?pid=166455517

高知県日高村では、みよし農園で2週間のトマト農業ボランティアをさせていただきました。05:00~08:00の3時間ということもあり、軽い気持ちで参加させてもらいましたが、肉体労働に身体が軋み、農業の過酷さ驚かされました。会社のメンバーと一緒にできないかと思っていたのですが、エンジニアばかりの弊社では誰もが参加できるイベントではないと感じました。

何度も行かせてもらっている日高村は、4000人の小さな村でありながらシュガートマトの生産が有名な地域です。2017年には日経MJでバイヤーが選ぶトマトランキング第1位となり、なかでも味部門がダントツ1位という実績を持ちます。しかし、村の課題はJAで選別されたトマトの廃棄。この有償で廃棄していたトマトをパスタソース等に加工して販売するNPO法人「わのわ会」を応援するために、ネクストモードのワーケーションセットを販売することにしました。1週間分の野菜が詰まったセットで、ワーケーション中も健康に働いてもらうことができます。ひとつひとつ、障がい者の方が箱詰めをしているため、注文から配達までに時間がかかったり、ときどき間違えがあったりしますが、たくさんの支援をいただいています。収益はすべてNPO法人わのわ会に入る仕組みでやれたのが嬉しかったです

背開きの鮎の姿寿司

日高村では、漁師が早朝の川で鮎を何十匹も釣ってきて、午前中に鮎寿司の名人に魚を預けていました。夕方には鮎の姿寿司になって、半分を漁師に返す。もらった漁師は軽トラックいっぱいの1年分のトイレットペーパーを返す、、、目の前で藁しべ長者のようなやりとりが繰り返されてました。

滞在中は、ありがたいことに農家の方と仲良くなって、たくさんの新鮮な野菜や果物をいただきました。料理を多めにつくって配り合ったりしているのですが、少ない荷物で旅をしている身としては、なにをお礼にお返ししたらいいのかわからなくて、ワーケーション先のお土産や東京のお菓子をお持ちしています。

巨大なグローバル資本に侵食されていない、地域社会を支えている様々な生業の複雑な絡み合いがそこにはありました。なんでもお金にしてしまわない近所付き合い、取って取られての関係。そんな、純粋な交換価値に還元されない隙間に溜まっていく絆が嬉しかったです。バタイユのポトラッチという言葉を思い出しました。

地元の人が「どこがいいの?」と首を傾げるようなその地域の「素の部分」の方が、何ものにも代えがたい唯一無二の刺激になりうる可能性をたくさん含んでいる。そんな可能性を教えてくれるのは、地元の魅力を外のモノサシで語れる人。偶然かもしれませんが、地元と繋げていただいた方は、UターンやIターンの人が多かったです。地域の人を巻き込んだ手作り感に地元を知るヒントがたくさんありました。

石垣島のゲストハウス ゆんテラス ゲストハウスはトラブルが楽しい

ゲストハウスでは想定外のトラブルがたくさんありました。洗濯物が盗まれたのか、飛んでいったのか、いつの間にかお気に入りのKEENのタオルがなくなりました(腕時計、自転車のライト、が無くなったときはショックでした)。飲もうと思っていた冷蔵庫の中のBEERがない。ハエや蚊、ヤモリはまだいい方で、部屋に蟻が行列をなしていたり、南国ではサソリがいたこともあります。また、誰かが酔ってトイレでリバースして床が汚れていて、夜中に掃除をしたことも。そんなとき、一緒に暮らしていると、面倒見の良さや人の器が見えてきます。飲み会やゴルフだけではわからない一面がわかって思い出になりました。

台風で飛行機が欠航して帰れそうにないときは、逆にもう、延泊できるということでワクワクしたりするようになりました。予定通りにいかないのが旅のいいところです。

家事に対する変化もありました。ゲストハウスではお皿を洗わない人は感謝されません。気が付いた人がキレイにするので、自分が使ったお皿よりも片付けるお皿が少ない人、多い人に分かれます。お皿を洗ってみんなが使う場所をキレイにしている人を見ていると、自分もキレイにしようと思いました。それがいつしか、自宅でお皿を洗う習慣に繋がりました。いままではパートナーに頼り切っていた家事をやるようになったのです。ワーケーション先ではなんでも自分でやらなくてはならないので、洗濯や掃除も随分とやるようになりました。

東武日光駅の目の前にある日光パークロッジ東武駅前はドミトリーが3000円以下で泊まれる宿泊施設。民家を簡易的に改造した宿ですが、個室もあって、キッチンが広く、コスパ重視の宿でした。外国人の宿泊者が多く、オープンなマインドで交流が楽しめました。宿泊した日は、フランス語圏の人、イスラム教徒、モンゴル人、日本人の学生、等、人種の坩堝でした。

日光パークロッジ東武駅前の共有スペースでお酒を飲んでいたら、モンゴル出身の大学院生がこの夏に実家から持って帰ったという地元のお酒をいただきました。牛乳からつくられたお酒で度数は10度。インターネットで調べましたが、馬乳酒でもウォッカでもなく、教えてもらった名前ではでてきません。石油のような臭いがしましたが、飲めば美味しいのだろうと思って飲んでみました。狸の油とどこか似た味で、正直なところ、美味しくなかったです。。。しかし、故郷のお酒をマズいと言うのは無礼と思い、黙って飲み干しました。

異文化交流は観光とは違い、本来は相容れない文化の衝突であることを痛感しました。知らないもの、わからないものを完全に理解することはできなくても、相容れないままにまるごと飲み込むことで、違う世界に一歩踏み込んだ気持ちになります。ビジネスの観点で言えば、外のモノサシに出会うことで、目の前の違う価値観の人に自社の商材を売るには、これまでの東京のやり方では駄目な点を教えてくれます。

3.②地域の発見

ワーケーションで変わった3つの価値観のふたつめは、地域の発見です。

Map data ©2022 Google

46歳まで、生まれてからずっと、都会暮らしが大好きでした。会社を作る前までは、深夜残業に備えてNTT東日本の初台本社ビルから3km圏内に住んでいました中学3年からの9年間を渋谷区大山町で過ごしたのち、合計で24年間(西新宿に2年間、方南町に3年間、代田橋に10年間)は本社ビルから歩いて帰れる距離に自宅がありました。車の免許も36歳まで取得せず、アーバンスタイルを貫いてきました。

ネクストモードを設立して働き方が変わってから、すっかり趣味が変わりました。ワーケーション先で登山をするようになり、百名山だけでなく、水晶山(群馬県四万温泉)、横瀬二子山(埼玉県芦ヶ久保)、月山(宮城県宮古市)、鋸山(千葉県)、野底岳(石垣島)のような里山にも登るようになりました。また、西表島のジャングルの中にあるマイナーな滝(ピナイサーラ、マリユドュ、クーラ、ゲータ、マヤグスク、ユツン、等)をめぐるのが好きになりました。あれだけ都会の生活が好きだった自分が、手つかずの自然を求めているのに驚いています

地域の人にとっては当たり前のことも、ワーケーションで滞在している訪問者にとっては一生忘れられない景色となることがあります。里山でのハイキングや登山、沢歩き、等、登山愛好家が利用するアプリYAMAPに登録されていない里山もたくさんあります。若い頃にもっとモビリティをあげておけばよかったと、いまでは思います。

なぜ山が好きなのか、自然が好きなのか、それはきっと、写真や映像ではわからない世界だからだと思います。バーチャルリアリティでは感じられない、理解できない、触れられない世界だからだと思います。

VRを否定しているわけではないんです。最近、Meta Quest(Oculus)にハマっていて、大好きな登山をVRでもやるようになりました(The Climb 2)。エベレストやK2など、自分では行くことのできない世界を見せてくれます。

でもVRは、あくまでも、いまはまだ現実の補完です。実際に行ったら、全然違うものだと思います。温度や湿度、風、匂い、吸い込む空気に味すら感じます。グローバリズムによって、世界が均質になっていくなか、その場所でしか感じられないもの、ワーケーションではできるだけそんなものに触れたいと思います。

「地域の魅力なんて簡単に見つけられない」という話をよく聞きます。それはもしかしたら、あたりまえ過ぎるものの集積かもしれません。

高知県日高村の「とまとと」では、「みてみて!こじゃんとおっきいバッタ」「かんぱい、繰り返しつづく返杯文化」のように、ひとつひとつのたわいもない地域の文化を可視化しています。なんども訪れて体験したくなるコトを美しい写真と共に掲載しています。地域おこし協力隊が地域の人が当たり前すぎて気が付かない地元の魅力を1枚1枚カードにして(その数、数十枚!)地域でできる体験を紹介しています。

高知の鯖の姿寿司 ワーケーション中は地産地消を

可能な限り、地元スーパーや直売所、市場で地元の人が食べているものを食べるルールにしています。お酒も、野菜も、肉も、行った土地のものを選んで自炊をしています。野菜やお米だけでなく、鯖の姿寿司、鮎の姿寿司、チャンバラ貝、牡蠣、、、郷土料理を地元の方に分けていただきました。地元の空気と地元の食べ物、何故かその土地で食べると美味しいです。

これまで自分はワインが好きだったのですが、ワーケーションで日本酒が好きになりました。こんなに安く美味しいお酒が飲めることに驚いています。ワインよりもコスパが高く、ついつい飲み過ぎてしまいます。印象的だったのは高知県の日本酒「美丈夫。酵母「CEL-24」を使った白ワインのような香りの日本酒。酸と甘みのバランスが美味しかったです。また、栃木の日本酒「仙禽 霧降も手頃で美味しいです。鬼怒川の伏流水で作られた滑らかで繊細な日本酒。フルーティーで芳醇な味でした。

4.③働く場所の充実

ワーケーションで変わった3つの価値観のみっつめは、働く場所の充実です。

ネクストモードは全員がテレワークで働く会社であるため、自宅やワーケーション先での働く環境の整備が生産性に影響します。社員それぞれの異なる事情に合わせた健康管理も大切で、自宅を快適な働く場所にすることが重要です。テレワークができる環境が整っていないと、ワーケーションは困難であるため、まずは物理的な働く環境を整えています。そこで、入社と同時に、3万円分のリモートワーク物品を、ひとりひとり、自由に選んでもらっています。加えて年に1回、追加で買ってもらう機会を作っていて、昨年度末は5万円分選んでもらいました。

ネクストモードではKeycafeのサービスを印鑑管理に利用しています

物理的なセキュリティの対策も重要で、覗き見防止フィルターやノイズキャンセリング・ヘッドセットをネクストモードで働く全メンバー(社員、派遣社員、業務委託、等)に配布しています。また、印鑑を管理ができるようにKeyboxを設置し、会社の印鑑を利用するときは遠隔から社長がスマホで印鑑のBOXをOPENにし、印鑑を押したらまた収納してもらっています。

ワーケーションの持ち物はここにまとめていますが、そこで書かなかった最近のお気に入りを以下に紹介します。ミニマリストになりつつあり、シンプルでコンパクトなものを好むようになってきました。

①髭剃り:TAGlabel by amadana AT-3SP11:1,680円  →コンパクトでよく剃れる髭剃りが欲しくて購入。安くてオススメです。

爪切り:木屋 黒(小サイズ):¥765 →しっかりと切れる小さな爪切りが欲しくて購入。

KEENの靴:CLEARWATER CNX →登山でも海でも使える靴が欲しくて購入。

④サブバッグ:Amazonベーシック リュック 超軽量折りたたみバックパック:¥2,020 →荷物が多くなった時に使える収納袋として購入。

電源タップ USB-C付き 3個AC口:TESSAN →電源が足りないことが時々あるので、USB-C付きのものを購入。

クラウドのおかげで何処でも働ける

クラウドの良さは、Pay as you goと呼ばれる従量課金にあって、使った分だけ支払うことができます。また、初期費用がかからない点も魅力です。これまでは大企業しか利用できなかった最先端の機能が、クラウドなら中小企業でも導入できます。そのため、我々のような小さな会社でも、大企業に勝るとも劣らない、ワーケーションも可能な使いやすい社内システムを持つことができました。

5.終わりに

最も大切な場所と時間で自分らしい働き方を

ネクストモードは、自分らしい働き方をクラウドで実現できると信じています。自分らしい働き方は、ワーケーションだけではありません。その人のありのままで活躍できる会社、そんな環境をクラウドで実現していきたいと考えています。Being settled、Sense of belonging、「自分の居るべき場所はここだ」と思えるような会社を増やしていきたいと思います。どの場所がその人にとってセトルするのかは人それぞれですが、居心地がよく、心が動く場所で仕事ができる人をひとりでも多く作りたいです。

ワーケーションの良い点は、場所を変えるだけでスッと頭が切り替わる点や、思わぬ出会いがある(セレンディピティ)点、日常と非日常が混ざって、いい意味で公私混同する点、掃除・洗濯・皿洗いなどが気分転換になるぐらい楽しくなる、等、たくさんあると思います。

「いきつけいなか」は、田舎との幸せな関わり方を探すサービス。田舎や自然に興味あるなら、“いきつけいなか”から見つけよう。いきつけ居酒屋のように、ふらっと1人でも気軽に来れる田舎をつくること。私たちは、そんな関係をつくれる田舎(地域)を少しづつ開墾していきます。 nosson.jp

日高村のNPO法人「nosson」が掲げている「いきつけいなかという言葉がとても好きで、いつでも気軽に参加できるコミュニティがあるというのは、生きていく上でゆとりになります。東京という場所に捕らわれて生きてきた自分にとって、働く場所の場所の自由があるということが、都市型思考からの解放に繋がり、生き方の自由を獲得することになりました。コミュニティに参加することで、結果的に関係人口と呼ばれる絆が生まれ、地方でお金を落とすことに繋がったと思います。コミュニティに参加しないで1回きりの訪問でお金を落とす観光客と、ながく地域との関係を育んでいく関係人口との違いが、「いきつけいなか」という言葉にあらわれているのかもしれません。

会社を設立して3年目に入りましたが、これからもワーケーションを続けて、ネクストモードのビジョンである「クラウドであたらしい働き方を」実践していきたいと思います。今年はいよいよ、海外で働いてみたいと思います。

 

Share this article

facebook logohatena logotwitter logo

© Classmethod, Inc. All rights reserved.