【書評】読みたいことを、書けばいい。 #ビジネス書を楽しもう

2020.12.06

はじめに

せーのでございます。

誰にも知らせずまったり始めている「ビジネス書」アドベントカレンダー、本日は6日目です。

バックナンバー


本日は田中泰延著「読みたいことを、書けばいい」です。

昨日私が影響を受けた「読み方」についての本をご紹介したので、今日は同じく私が影響を受けた「書き方」についての本をご紹介いたします。

著者の田中泰延さんは元電通のCMプランナー、コピーライターで、電通を退社してからは糸井重里さんらと並ぶコピーライター、Webライターとして大活躍している方です。扱う題材はベートーベンからマキシマムザホルモンまで幅広く、まさにプロの「ライター」として、読者の熱狂的な支持を得ている方です。

ブログを書いたりYoutubeをやっていたりすると「何を書くか」に迷うことがよくあります。このネタはきっとPV数が増える、このネタは旬だから今のうちにやっておいたほうが良い、など、気が付かないうちに読者、視聴者が楽しめるものを優先している事が多くなりました。そんな時、この本を読み返すと「もっと自由にやるべきなんだ」と初心に返る、私にとって大事な本です。

そもそもこの本は著者自ら「この本は文章術でもテクニックを教えるものではない」と言い切っています。むしろ著者は一般にはびこっている文書術を忌み嫌ってすらおり、

「文章力向上72のステップ」などといいう本を見ると、気が遠くなる。
だいたい、いつまでステップしてるのか。いい加減ホップをするなり、ジャンプをしてはどうか。

世に出回る文章術の本には「おまえがまず文章を習え」と言いたくなるような読みにくい本がある。ものすごく太った人が出すダイエット本のような、有無を言わせぬ迫力がある。

と、どストレートにディスっています。
他にも全般的に天の邪鬼な雰囲気があり、例えば「無駄のない文章を書く」ということについてはこのように書かれています。

文字が多い本は、それだけで読みたくなくなることはよく知られている。大切なことは文字がすくないことである。本書は、できるだけ文字を少なくし、無駄な記述を徹底的に排除した作りになっている。この大切なことを、私は近所のコンビニに出かけた際に財布を忘れて取りに帰る途中で、スマホに「無駄な記述を少なくすることが大切」とメモしておいた。

財布は玄関の下駄箱の上にあった。よかった。財布は1年前に買った新品で、ファスナーで閉じる細長タイプのものだ。いずれにせよ無駄な記述が多い本と文字が多い本は読みたくないと思われてしまう。

一事が万事、こんな感じでダラダラ、まったりと進んでいきます。この自由な感じ、型にはまっていない感じ、でもベースとしての技術はきっちり押さえている感じが私はとても好きなんです。なんか、プロの遊び、という感じがします。

ということで今日は「人が面白いと思う文章を書くには」というヒントをご紹介します。

文章とは

この本が全編に渡って伝えているメッセージは「自分が楽しいと思う文章を書こう」というものです。

この本はまず最初に「文書」と「文章」の違いを指摘します。

  • 文書: 問題解決や目的達成のために作る書類。レポート、論文、報告書など。
  • 文章: 事象と心象が交わるところに生まれるもの。随筆。

一般的に外に向けて書くものは「文章」で、もちろんこのブログも「文章」です。文章を書くのに大事なことは「事象」と「心象」が同程度に混じり合うことである、とこの本には書かれています。

事象、とは私達が見聞きしたことや、知った事を指します。世の中のモノ、コト、ヒト、などです。
一方心象、とは心が動き、書きたくなる気持ちのことです。
事象に偏った文章の事は「ルポタージュ」と言われ、それを書く人は「ジャーナリスト」「研究者」と言われます。
それが心象に偏ると「創作」「フィクション」と言われ、それを書く人は「小説家」「詩人」などと言われます。
ライターとして文章を書くにはこの事象と心象が両方ある文章が望ましい、ということですね。

定義をはっきりさせる

文章を書く時に大切なことは「定義をしっかり持つこと」とこの本は言います。
つまり、一つ一つの単語の定義をしっかり捉えていることで、考えがブレることなく書き続けることが出来るようになる、とのことです。

その例としてこの本に出てくるのは「趣味の定義をしてください」というものです。
趣味とはどういう事を「趣味」というのか。「仕事でなく、楽しみとしていること」「空いている時間にすること」これでも間違いではないそうですが、もっと深く、明確に定義することで、曖昧なまま言葉を積み重ねることがなくなる、ということです。趣味を明確に定義すると

「手段が目的にすり替わったこと」

となります。釣りが趣味の場合、魚を釣る、という目的より釣り竿、ルアーなどの、本来「手段」であるはずのものを必要以上に購入し、陳列し、愛でたり撫でさすったりすることが目的化しています。この状態こそを「趣味」と呼ぶ、ということです。なるほど。

このような言葉について真理を捉えて、短い、明確な定義をする考え方について、この本では「幕府」という単語の定義の求め方などを例としてわかりやすく説明しています。

ターゲットは想定しない。自分が楽しいものを書く。でも自分の考えは1%にとどめる

著者は広告業界で働いてきた経験から「特定のだれかに言いたいことが"届く"ということなどない」、と言います。

「20代女性に響く書き方」。そんなものがわかる50代男性がいたら、もうちょっと20代女性にモテているだろう。そしてそんなモテ方を知っている男は、暗い部屋で一人で文章など書かない。

「たった一人のだれかに手紙を書くように書きなさい」というのもある。かなりもっともらしいが、それはLINEしてください。

読み手など想定して書かなくていい。その文章を最初に読むのは間違いなく自分だ。自分で読んでおもしろくなければ、書くこと自体が無駄になる。

あくまで「自分が面白いと思うものを書く」というのが基本です。自分が面白いと思うものを、熱を持って書いていく。そうなると、後は「どうやったら伝わるか」というテクニック論になるわけですね。

このテクニックの一つとして「自分の内面を語る人はつまらない」というのがあります。

文章とは事象と心象が交わるもの、という定義でしたが、そのためには事象を提示して興味を持ってもらわないと心象を述べるところまで至らない、とこの本は言います。

事象とは、つねに人間の外部にあるものであり、心象を語るには事象の強度が不可欠なのだ。

小学生の作文が面白くないのは「面白かったです」「ドキドキしました」などの内面を吐露してる割合が多いから、とこの本は指摘しています。

調べたことを並べれば、読む人が主役になれる。
「わたしの想いを届けたい!」人は、歩道橋で詩集を売ろう。

つまり、自分が面白いと思ったものを書く場合は、それを徹底的に調べて事実を積み重ね、さらにその一つ一つをきちんと自分なりに定義出来るようになった上で並べ、最後に「私はこう思う」をそっと添える。これくらいのバランスが丁度いい、ということです。

思考の過程を披露する。ただし「編集」をする。

人の気持ちを動かす文章を書くには「思考の過程に相手が共感してくれるかどうか」だと、この本は言います。

いきなりズバッと結論を提示しても、何の共感もされない。「メロンは、イースター島である」とだけ書かれてもだれにもわけがわからないからだ。しかしメロンを食べたという事象を起点に、風が吹いたら桶屋が儲かるまでを順番に書けば、書くあなたも読む人もイースター島までたどり着くことができる。

事象と事象をつなぎ合わせる時に、どうしてその事象を次に書くのか、自分がどう思ってそうなったのか、の過程を書く事が読者の興味を引きます。ただここで大事なのは、自分の心が動いたもののみを残す「編集」をすることだそうです。

「あなたは昨日何をしましたか?」と質問する。
ほとんどの人は「朝起きて、近所のコンビニでパンを買って、会社にいって、夜は同僚と居酒屋に行きました」などと順を置いながら話す。しかしそこでは重要な事が行われていいる。わたしはそれを聞いて「それが、編集ということですよ」と指摘する。


「朝起きて、近所のコンビニに行った」とは答えるが、だれも「朝起きて、トイレに行き、水を流し、歯ブラシにチューブから歯磨き粉をつけ、歯を磨いて、うがいをして、パジャマを脱ぎ、靴下を選んで・・・・・・」とは答えない。

冗長となる部分はカットして、自分が面白いと思った部分を編集して過不足なく書くことが大事です。これは前回書いた「1ラインサンプリング」にもつながる考えだと思います。
つまり、読む人は心が動いたもの文章を記憶に残していくものなので、書く方も自分の心が動いたものごとを中心に書くことで、読む人が読みやすい文章ができる、ということではないでしょうか。

実はかなりテクニカルなことも書かれている

あまりにも考え方の部分や文章を書く根幹の部分が面白いのでカットしていますが、実はこの本の中にもテクニカルなことが結構書かれていますので最後にまとめてご紹介します。特に勉強になった「広告の書き方」から。

15文字で言う

広告は短いのでメッセージは15文字くらいでまとまらないと長過ぎるのだそうです。
ただしここで大事なのは「広告主の言いたいことを言えばいいというものではない」というところです。

なので、商品の特徴や製品名などを踏まえて長い文章を書くだけ書いて、それを損なわずにどこまで短く出来るか訓練が必要です。


1つだけ言う

広告主に取って商品の言いたいことは山ほどあるのですが、そこから一つに絞らないと、それぞれの情報が半分以下しか伝わらないことになります。


引きつける

言いたいことを一つに絞ったとしても、選択肢が多いこの世の中で、それを視聴者が興味を持って見てもらえるとは限りません。
そこで大事なのは「とにかく引きつける」という作業です。CMに有名人や赤ちゃん、動物などが出てくるのはこの理由です。

いきなり言いたいことを言っても無視されがちだ。広告は、無理矢理にでも目を引きつけておいて、商品メッセージを伝えるのだ。


人が気にしていることを言う

商品メッセージを伝えるのに有効なのは、それを見た人が「自分の問題」と考えることです。
「燃費のいい車」を伝える時には、購買者のメリットである「お金が節約できる」ということを生活で気にしているお金の話に変えて、具体的な利益を想像させることが大事です。

「新しい洋服を買える」「毎日の食事のおかずを一品増やせる」などの人間の欲望に関わる「気にしていること」を喚起させるメッセージが「当たる広告」のコツ、なんだそうです。


わかりやすいがちょっと発見があること

ここが広告のミソだと思いますが、実際に伝えたいことを少し別角度からの視点で表現するといいのだそうです。

想像力と数百円     新潮文庫

これは糸井重里さんの名コピーです。このようにどこにも難しい言葉は使われていないが、文庫本というものが持つ本質への「発見」が誰にでもわかるように短く書かれている、とこの本は語ります。

他にも「商品と関係ないことも広告として成り立つ」「無責任に考え、結果に責任を持つ」など広告に関してのノウハウや、調べ物をする時に役に立つ図書館など、具体的なアドバイスもたくさん書かれています。

まとめ

ということで今日は「読みたいことを、書けばいい。」をご紹介しました。
クラメソにいるとブログを書いたり、カンファレンスで発表したり、Youtubeに動画を投稿したり、と沢山の表現の場が与えられます。
どうせならみんなに楽しんでもらえるものを書きたい、と思っています。ですが、自分が楽しむことが一番大事、ということを忘れないようにしたいと思います。

あ、カンファレンスといえば、現在行われているre:Invent2020のカンファレンスとして「re:Growth 2020」を行うことが決定しております。

私もこの本に書かれている「楽しんで」、re:Growthに望みたいと思います。

それではまた明日、お会いしましょう。