re:Invent2019でのMedia & Entertainment向けリリースとローンチを振り返ってみる #reinvent

2019.12.31

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はじめに

清水です。re:Invent2019、期間中のメディア系サービスのアップデートがあまりなかったと思われがちですが、メディア系に限定せずAWSサービス全体に視野を広げ、メディア系にも活用できるサービス、という観点でみると多様なサービスがリリース、ローンチされていました。本エントリではAWS Media Blogにポストされた以下エントリをもとに、これらre:Invent2019でリリース、ローンチされたメディア系向けサービスを振り返ってみます。

3つの大きなテーマについて

re:Invent2019では75以上の新サービスのローンチ、機能アップデート等がありました。本エントリでもAWS Media Blogを参考に、3つの大きなテーマでこれらの中からメディアワークロードに関連のあるものをまとめていきたいと思います。

  • 最も重要な低レイテンシ
  • メディアワークロードをよりスマートに
  • AWSコアサービスの機能強化

最も重要な低レイテンシ

低レイテンシ向けのサービスとしてはAWS Local Zone、AWS Wevelength、AWS Outpostsの3つが挙げられます。いずれもこれまでのAWSリージョンよりもエンドユーザ近い場所にAWSコンポーネントを配置することで、低レイテンシが実現できると期待できます。また状況等に応じて3つのサービスを使い分けることになるかと考えます。

AWS Local Zones

AWS Local ZonesはAWSのコンピューティング、ストレージ、データベース、そしてその他のサービスを、現在AWSリージョンが存在しない地域に近づけるための新しいタイプのAWSインフラストラクチャ展開方法です。ローンチ時点ではロサンゼルスのLocal Zoneが利用可能となっていますが、このロサンゼルスのLocal Zoneはオレゴンの通常のリージョンに属したLocal Zoneとなります。メディアおよびエンターテイメントコンテンツの作成、リアルタイムゲーム、機械学習などのユースケースで1桁のミリ秒の遅延を実現することが可能です。

AWS Wavelength

5Gネットワークのエッジとなる通信プロバイダのデータセンター内にAWSコンピューティング、ストレージなどのコンポーネントを配置することが可能になるサービスです。低レイテンシが求められるモバイルアプリケーション向けと言われますが、モバイルネットワークと通信するメディア系用途にも有効活用できるかと考えます。

AWS Outposts

AWSから提供される物理ハードウェアをオンプレミスに設置し、AWSコンポーネントを拡張するサービスです。オンプレミスシステムやオンプレミスストレージへの接続、ローカルでのデータ処理などが必要なワークロードに適しています。サービス自体は昨年 のre:Invent2018で発表されていましたが、今年のre:Invent2019で晴れてGAとなりました。

メディアワークロードをよりスマートに

Amazon Kendra

機械学習を使った非常に正確で使いやすいエンタープライズ向け検索サービスです。強力な自然言語検索機能をWebサイトおよびアプリケーションに提供するため、エンドユーザーは、会社全体に広がる膨大な量のコンテンツから必要な情報をより簡単に見つけることができます。メディアのメタデータ検索なども活用できそうですね。

Rekognition Custom Label

Amazon Rekognitionカスタムラベルを使用すると、ビジネスニーズに固有の画像内のオブジェクトとシーンを識別できます。これにより、ビデオ制作用のコンテンツの発見など、さまざまなユースケースが可能になります。

Amazon Augmented AI (A2I)

Amazon Augmented AI(Amazon A2I)を使用すると、機械学習予測の人間によるレビューに必要なワークフローを簡単に構築できます。Amazon A2Iは、すべての開発者に人間によるレビューを提供し、人間によるレビューシステムの構築や多数の人間によるレビュー担当者の管理に関連する未分化の重荷を取り除きます。

AWS Data Exchange

AWS Data Exchangeを使用すると、クラウド内のサードパーティデータを簡単に検索、購読、使用できます。認定されたデータプロバイダーには、ロイターなどのカテゴリをリードするブランドが含まれており、複数の言語で年間220万件以上のユニークなニュース記事からデータを収集しています。データ製品をサブスクライブしたら、AWS Data Exchange APIを使用してデータを直接Amazon S3にロードし、さまざまなAWSのデータレイク/分析サービスや機械学習サービスでデータを分析できます。

AWSコアサービスの機能強化

AWS G4 Graphic Instances

EC2 G4インスタンスはNVIDIA T4 Tensor Core GPUを搭載したインスタンスタイプです。画像分類、オブジェクト検出、推奨エンジン、自動音声認識、言語翻訳などの機械学習アプリケーションにも活用できますが、最新世代のGPUを搭載しているということでもちろん、グラフィクスワークステーションやビデオトランスコーディングなどグラフィクスを多用するアプリケーション向けにも利用可能です。

Statmux for AWS MediaLive

ビデオ処理サービスであるAWS Elemental MediaLiveの新しい機能であるStatistical Multiplexing (Statmux)を使うことで、配信用のライブブロードキャストビデオを準備、共有することが可能です。Statmuxを使用することで、ライブコンテンツを処理して発信し、配信パートナーと共有して、衛星、ケーブル、または地上ネットワーク経由で配信できます。Statmux for MediaLiveは、配信用のブロードキャストビデオを準備する従来のハードウェアベースのアプローチに代わるものであり、ライブコンテンツをより柔軟かつ効率的に配信し、インフラストラクチャと管理コストを削減し、組み込みの信頼性を備えた高品質のビデオを配信することができます。

EC2 Image Builder

EC2 Image BuilderはLinuxまたはWindows Serverイメージの作成、保守、検証、共有、および展開を簡素化します。Amazon EC2およびオンプレミスで利用可能です。Image Builderを使用すると、イメージを更新するための手動の手順はなく、独自の自動化パイプラインを構築する必要もありません。メディアワークロード等においても様々な場面でEC2などのイメージ作成は必要となるかと考えますが、とても有効なサービスだと考えます。

AWS Graviton2-powered EC2 Instances

次世代のARMベースのGravition2プロセッサ搭載の新たなインスタンスタイプがM6g, R6g, C6gです。7nm(ナノメートル)製造プロセスで構築されているカスタムAWSデザインとなっており、第1世代のGravitionプロセッサを搭載したA1インスタンスと比べると、2倍の浮動小数点パフォーマンス、最大5倍のメモリアクセス高速化、全体としては最大7倍のパフォーマンスを発揮できるとのことです。また旧世代となるM5/R5/C5と比較しても、例えばX.264ビデオトランスコーディングで26%の性能向上が謳われています。

AWS Compute Optimizer

AWS Compute Optimizeは機械学習を利用して、EC2リソース使用状況に応じた最適な推奨事項を表示するサービスです。リソースを過剰にプロビジョニングしてしまうと不必要なインフラストラクチャコストが発生し、反対に過少にプロビジョニングするとアプリケーションのパフォーマンスが低下してしまいます。AWS Compute Optimizerを使うことでワークロードに最適なAmazon EC2インスタンスのタイプを特定することが可能です。

AWS Nitro Enclaves

AWS Nitro EnclavesはEC2インスタンス内で機密性の高いデータを保護するサービスです。セキュリティが重要なアプリケーションをホストするために、隔離、強化され、高度に制約された環境が提供されます。Nitro Enclavesにはソフトウェアの暗号化認証が含まれているため、AWS Key Management Serviceとの統合だけでなく、承認されたコードのみが実行されていることを確認できます。

UltraWarm

UltraWarmはAmazon Elasticsearch Service向けにHot-Warm層を設けるサービスです。既存のオプションに比べてほぼ90%のコスト削減で、最大900TBのストレージが提供されます。UltraWarmはAmazon Elasticsearch Serviceエクスペリエンスのシームレスな拡張機能であり、使い慣れたKibanaインターフェースから、ホットデータとUltraWarmデータの両方をクエリおよび視覚化できます。

Accelerated site-to-site VPN using Global Accelerator

AWS Transit Gatewayへのサイト間VPNを作成する際にオプションとして、AWSグローバルネットワークを使用してパフォーマンスの向上を活用できるようにアクセラレーションを有効にできるようになりました。AWS Global Acceleratorが利用されており、カスタマーゲートウェイデバイスからのトラフィックは、最も近いAWSエッジロケーションを経由してルーティングされ、輻輳のない冗長なAWSグローバルネットワークを通過して、AWSのVPNエンドポイントに到達します。

Transit Gateway Inter-Regional Peering

異なるAWSリージョン間でTransit GatewayをPeeringする機能です。Transit Gatewayを用いた複数のAWSリージョンにまたがるグローバルネットワークが構築可能となります。またリージョン間トランジットゲートウェイピアリングを使用するトラフィックは常にAWSグローバルネットワーク上に留まり、パブリックインターネットを通過しないため、一般的なエクスプロイトやDDoS攻撃などの脅威が減少します。

Transit Gateway Multicast Support

AWS Transit Gatewayのマルチキャストサポートです。この機能に寄りクラウド内でマルチキャストアプリケーションを簡単に構築し、接続された数千のVirtual Private Cloudネットワーク内にデータを配信できます。マルチキャストは、多数のユーザーに単一のデータストリームを同時に配信します。ニュース記事や株価情報などのマルチメディアコンテンツと購読データを購読者のグループにストリーミングするための推奨プロトコルです。

AWS Lambda Provisioned Concurrency

AWS Lambdaの機能アップデートです、これまで初回実行時などにコンテナの作成、デプロイパッケージのロードと展開、ランタイム起動など初期化処理が入る場合に実行までに時間がかかるコールドスタートとなっていました。Provisioned Concurrency機能を使うことで初期化処理の完了した環境が準備され、関数が呼び出されてから2桁のミリ秒以内に開発者のコ​​ードの実行を開始するようになります。これまでは独自に別途コールドスタート対策を行う必要がありましたが、設定のみで対策が行えるようになりました。

まとめ

AWS Media Blogに投稿されていたM&E Releases and Launches from re:Invent 2019のエントリをもとに、re:Invent2019でリリース/ローンチされたMedia & Entertainment向けサービスを振り返ってみました。私個人的に、いくつかの新サービスはメディア系でも使えるのかな、と考えてre:Invent2019期間中の新サービス、アップデートを追っていましたが、ここまでたくさんのサービス、アップデートがメディア向けワークロード等に使えるのか!とびっくりしました。その数なんと18個になります。正直すべてをきちんと追いきれていないので、メディア系のどんなユースケースにマッチするのか(そしてマッチしないのはどんなケースか)、きちんと把握していきたいと思います。