【書評】習慣が10割 #ビジネス書を楽しもう

2020.12.12

はじめに

せーのでございます。

誰にも知らせずまったり始めている「ビジネス書」アドベントカレンダー、本日は12日目です。

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本日は吉井雅之著「習慣が10割」です。

このアドベントカレンダーでも幾度となく出てきた「習慣化」という単語。仕事を効率的に進めるには「いかに習慣化するか」という作業が非常に大事です。

例えば、仕事をする際に、席についてから何十分かは必ずダラダラ過ごしてしまう人。
今年こそは英語を覚えよう、と毎年正月に思い続けて何年も経っている人。
気がついたら部屋が汚くなっている人。

これらは全て「習慣になっていないから」です。つまり「習慣が10割」なんですね。
この本はこの「習慣」というものにスポットを当て、「習慣化するとはどういうことか」「習慣化するにはどうしたらよいか」について書かれている良書です。

特に習慣というものが脳科学の分野と深く結びついている、という事実を知ることは大きな役に立ちます。つまり、物事が続かないのは意志が弱いからでもだらしないからでもなく、習慣化するべく脳機能を使っていないから、ということになります。誰でも習慣化できるんです

ということで今日は仕事術の本を楽しむのに必須とも言えるこの習慣化する脳の仕組みについてご紹介します。

人に能力の差はなし。あるのは習慣の差だけである。

この本がまず最初に指摘するのは「人は得意不得意や生まれ持った性格で能力が決まるのではなく、生まれてからの習慣の差によってできるできないが決まるのだ」ということです。

一見聞くと才能を全否定しているようにも聞こえますが、この本で論じているのはそこまで高いレベルの話ではありません。

例えば「勉強のできる赤ちゃん」「勉強のできない赤ちゃん」はいません。しかし学校へ上がるとクラスには「成績の良い子」と「成績の悪い子」がいます
これは「頭がいい」「頭が悪い」という能力の差ではなく、単に「コツコツ勉強する習慣がある子」と「コツコツ勉強する習慣がない子」の差なのだ、ということなのです。

今の自分を作っているのは、過去の習慣の積み重ねに他なりません。

この習慣の差が生まれる背景には人間の「刷り込み」が大きく関係しているのだそうです。

人間の脳は耳から入ってくる情報を全て本当のことだと思いこむ性質があります。

「勉強のできる子」は普段から親や回りから「あなたはできる子ね」「あなたならできる」と言われ続けており、その情報を脳が信じて「自分はできる子だ」と思い込み、一度や二度の失敗では諦めずに挑戦し続け、自分から進んで勉強する習慣がつきます。その結果自分を「勉強ができる子」に作り上げていくのだそうです。
この思い込みは他人からの言葉だけではなく、自分で発した言葉にも反応します。自分で「どうせうまくいくはずがない」という口癖があるような人は、その情報を脳が信じてしまい、脳が回避反応を起こすために、習慣にできなくなる、というわけです。

一定期間に渡って五感から繰り返し取り入れた情報は、やがて人間の潜在意識に到達して、脳の奥深くにどっかりと根をおろします。

TVやYoutubeなどで繰り返し聞いたフレーズやCMソングをふとした時に口ずさんでしまう。この行動は「無意識の反応」と言われ、潜在意識に刷り込まれた情報が行動、言葉、表情などの反応となって顕在化した状態なのだそうです。
つまり五感から定期的に情報を入れることで、潜在意識に刷り込みを与えると、それが顕在化して実際の行動に無意識に出てしまうのです。この「自分では意識しなくても、ついやってしまうことや自然とそうしてしまうこと」を「習慣」と呼ぶわけです。

習慣とは自分との約束を守ること

習慣が一定期間に渡って五感から情報を取り入れることで可能となっていくことはわかりました。
ここで習慣化できない人が陥りやすい事があります。

それは「目標を達成するために何をやるか、を自分で決める」という作業です。

このプログラム言語ができるようになりたい。ではなく「このプログラムの技術書を毎日3ページ以上は読む」というようなことですね。

意外に思うかも知れませんが、多くの人は物事を自分で決めてはいません。
頭では何となく「もっと頑張ろう」「もっと努力しなくては」と考えていても、「そのために何をするのか」は決めていないことがほとんどです。

習慣化する第一歩は「何をやるか自分で決める」ということです。

脳が楽しいと感じないと続かない

習慣には続く習慣と続かない習慣があります。
英会話、ダイエット、貯金、ジムなどはなかなか続かない習慣です。
スマホ、ゲーム、マンガ、お菓子、買い物などはよく続く習慣です。この違いは何でしょうか。

それは「脳が楽しいと感じるか、感じないか」なのだそうです。
この本ではそのメカニズムがこう解説されています。

五感から脳に入った情報は、扁桃核という部位によって「快・不快」を判断し、快と判断したものには近づき(接近反応)、不快と感じたものからは遠ざかろうとします(回避反応)。

脳の仕組みからいえば、全ては「好き嫌い」で決まります。

つまり習慣化させるために大事な要素は「正しいか」や「役に立つか」ではなく「楽しいか」ということ、つまり「習慣化したいことを楽しめるかどうか」ということになります。よく「英語を覚える一番の近道は外国人と付き合うこと」と言いますね。つまり、そういう事なのです。

では、扁桃核が何を持って「快・不快」を判断するか。それは「過去の感情とセットになった記憶」なのだそうです。

苦手な仕事は「過去にうまく行かなかった記憶があるから」そのデータを元に扁桃核が「不快」と判断し「できればやりたくない」という気持ちでいやいや動くという「回避反応」を起こします。

つまり、楽しいか楽しくないかという感情は、全て自分が後付した結果だということ。最初から「楽しい仕事」と「嫌な仕事」が存在するわけではないのです。

そして人間の脳はネガティブな感情ほど記憶されやすい、という特性があります。おそらく生存本能かと思います。なので、うまくいったことより、うまくいかなかったことのほうが、過去のデータに多く蓄積されてしまいます。その記憶力故に、過去のデータに支配されて、習慣化させるのが難しくなるわけです。

弱小野球チームの選手にとって、本当に難しいのは甲子園に出ることではありません。
「自分たちは甲子園に行ける!」と思うことが難しいのです。

過去の記憶が感情を決め、感情が行動を決める。
その行動の積み重ねが、習慣になるのです。

となると、大事なことはその事を「いかに楽しいと感じられるか」となるわけですが、過去の記憶が快・不快を決めてしまうとするならば、一度苦手だと思ったものは今更習慣にはならない、ということになりますね。

脳は入力より出力を信じる

この本によると習慣というのは大きく4つのプロセスに分かれます。

  • 受信習慣: 五感からの情報を知る、聞く、感じる、見る
  • 言語習慣: インプットから得たイメージを言語に置き換える
  • 思考習慣: 言語を元に考える
    • 確信習慣: 確信できるか、できないか
    • 錯覚習慣: 良い思い込みか、悪い思い込みか
  • 行動習慣: 思考を行動に移す

多くの人が「習慣」と呼んでいるものは「行動習慣」に該当します。ですが、習慣は上から順にプロセスを経ていくので習慣、つまり行動習慣を変えるには、さかのぼって受信習慣、言語習慣、思考習慣を変える必要があります。そして思考習慣の中で錯覚習慣を利用して思い込み、確信習慣で「自分はできる」と思うことで、行動習慣が変わります(後述)。

そしてこの本ではこの習慣に関して「受信習慣から思考習慣まで、つまり受信してから思考が出来上がるまでは0.5秒」と言います。ものすごい速さです。そのメカニズムは

  • 五感からの情報を受信すると、0.1秒後大脳新皮質に到達する
  • 大脳新皮質にて認知した結果が大脳辺縁系に届く
  • 大脳辺縁系は0.4秒で過去の記憶を検索して、インプットにどのような意味があるかを判断する
  • 大脳辺縁系内部にある扁桃核が「快・不快」を判断する

となります。大脳新皮質は「知性脳」と言われ、認知する役割の脳です。俗に言う右脳、左脳と呼ばれる部分もここになります。
大脳辺縁系は「感情脳」と言われ、喜怒哀楽を判断する役割の脳です。扁桃核は大脳辺縁系の一部です。つまり私達は何か情報を受け取ると0.5秒で好き嫌いを判断している事になります。例えば人は初対面の人に好き嫌いの判断を3秒程度で行うため第一印象というのは大事だ、という話があります。それもメカニズム的には情報が扁桃核に至るまでのプロセスが一瞬であるから「見た目」や「声」といったインプットのみで好き嫌いが判断されてしまう、ということですね。

ですがこの本にはもう一つの脳の性質も紹介されています。それは「脳は"入力"より"出力"を信じる」ということです。

ここが少し複雑なのですが、入力とは思考習慣にて感じたイメージや思いです。出力とは言葉や動作、表情などです。嫌なイメージを思い浮かべば、やりたくない、という表情になります。
入力部分は過去の記憶によって判断され、記憶はネガティブなものが蓄積されやすいので、入力がネガティブになることは多いです。が、出力、つまり言葉や動作、表情を変えることで脳が出力を信じ、過去のデータからその出力につながるデータを探します。
結果思考習慣がポジティブな方面にアップデートされ、脳がプラスに強化される、ということです。行動習慣からでた行動を受信習慣が受信するループが出来上がるわけです。

この考え方はは心理学でも多用されています。数年前にある脳研究者に「やる気を出す方法を教えて下さい」と聞きに行った取材陣に対して「そもそもやる気というものは存在しません」と言い切った話が話題になりました。これも同じ考えで、人間は行動によって心理が影響を受けるので、行動を変えることで心理的影響を変える、という考え方です。

では、どうやって出力を変えていったらよいでしょうか。

自分は習慣化ができる、という習慣を作る

受信習慣から得た情報を思考習慣にて判断した結果ネガティブになっても、行動習慣を変えることによって受信習慣がそれを受信して思考がアップデートされていく、ということでした。ではどういう行動をするべきなのか。この本では具体的に

  • 小さな習慣から始める
  • ハードルを下げる
  • ゲーム感覚でやる
  • 仕組みを作る
  • 1個前の習慣を決める
  • 丁寧に行動する
  • なりたい自分を明確にする
  • 今の自分を見つめる
  • 成功分岐点を超える
  • 脳を騙して確信習慣を作る
  • 悪徳錯覚習慣を良徳錯覚習慣に変える

というような方法を教えてくれています。

この中で私が面白いと思ったものをいくつかご紹介します。


小さな習慣から始める

小さな習慣とは

  • 早起き
  • 日記をつける
  • 通勤時間に本を読む
  • 脱いだ靴を揃える
  • 職場の人に自分から挨拶する
  • 目の前のゴミを拾う

と言ったものだそうです。このような誰にでも出来る事を「自分との約束」として1日1日つづけることで脳には「続けられた」という記憶が残り、別のことをやろうとした時も「自分は続けられる」と楽しめるようになるそうです。
同じ原理で3日坊主も「3日しか続けられなかった」ではなく「3日も続けられた」と考えることによって、脳は「自分は習慣化が出来る人」という記憶になり、その繰り返しで、望んでいた習慣も出来るようになるそうです。


1個前の習慣を決める

例えば早起きを習慣にするには「何時に寝るか」を決める、寝る時間を決めたら「何時までにお風呂に入るか」、その次は「食事を済ませるのは何時までか」「帰宅するのは何時か」と、常に1個前の習慣を決めると、本来の目的も達成されやすいそうです。

朝のランニングを習慣にしたいなら、枕元にトレーニングウェアを用意してから寝る。
通勤電車で英語学習を習慣にしたいなら、カバンの中にテキストを入れる。
帰宅後に資格試験の勉強を習慣にしたいなら、帰ってすぐ目に入る場所に問題集と筆記用具を置いておく。
こうして1個前の習慣を決めれば、それに続く習慣もスムーズに実行できます。

以前の集中力の話でも「集中したいものを視界にいれ、それ以外を視界から取り除くことでウィルパワーを一つだけに使える」というお話がありました。時間術のときにも「リサーチして準備してすぐに取り掛かる」というものがありましたね。今回も習慣の観点から一つ前にやる習慣を決める、というお話です。これらは全てベースとなる考えが違うだけで、結論としては同じことを指していると思います。

うまくいく人は、必要があることに接近し、必要がないことを回避する。
うまくいかない人は、必要があることを回避し、必要がないことに接近する

英語の勉強をするには手元のカバンに参考書を入れるーこれが「必要があることに接近している」ということで、
ダイエットをするにはコンビニでもスイーツの棚には近寄らないーこれが「必要がないことを回避する」ということです。
1個前の習慣を決める、というのはつまり、必要になることに対して接近する、ということを指しているのですね。


なりたい自分を明確にする

これは目標に対して「自分は絶対にこうなりたい!」というイメージを、なるべく大胆に思い描く、ということを指しています。

この本によると、右脳、左脳のうち左脳には「論理的・分析的な思考」をし、また「過去を考える」という機能があるそうです。
一方右脳には「感覚的なイメージを描く」と共に「将来を考える」という機能を持ちます。

もし右脳で将来のイメージを何も描かずにいると、人間は左脳の過去の記憶にしはいされてしまいます。

つまり、左脳が想起するネガティブな過去の記憶を打ち消すために右脳でなるべく大きく具体的な成功のイメージを描こう、というアプローチです。

本来の脳の働きと感情の関係はもう少し複雑なのですが、ビジネス本ということで目的に向かうために単純化しているのだと思います。

なにか頑張る時に、成功した時の具体的なイメージを持つことは大事、と言われますよね。それはイメージした時のワクワク感から、これからやることは楽しいことなんだ、と脳に思わせて習慣化させるためのものなんですね。


成功分岐点を超える

習慣を続けた時間と、自分の成長度合いは比例するものではないそうです。
成長はあるポイントを境に一気に急カーブを描いて上昇するものだそうです。

成功分岐点の瞬間までは、自分の成長を実感できない時期が続くということ。
それでも努力を続けた人だけが、理想の自分になれるのです。

つまり、「自分が成長していくこと」をやる気の元としている人は挫折しやすい、ということだと思います。
あくまでその作業が面白い、と感じていれば、長く続けられ、そしてある時突然全てを理解することになるのですね。


悪徳錯覚習慣を良徳錯覚習慣に変える

悪徳錯覚習慣とは「悪い錯覚をする習慣」を
良徳錯覚習慣とは「良い錯覚をする習慣」の事を指します。

つまり、自分を認知する際に人間は錯覚を使っている、ということです。

じゃんけんを強いと思っている人と弱いと思っている人がじゃんけんをしたらどちらが勝つかといえば、それはやってみないとわかりません。 強いと思っている人が負けて、弱いと思っている人が勝つことも当然あるはずです。 つまり、じゃんけんが強いも弱いも、単なる思い込みだということ。

そして、この思い込みを利用して脳に良い錯覚を起こさせて習慣化する、という方法がこの本では紹介されています。

東大に進学する学生の親も東大出身者が多いことは知られていますが、これは頭の良さが遺伝したわけではありません。
一番身近にいて、家ではカッコ悪い姿も見せているお父さんやお母さんが東大出身だと知って、「この人達が東大に入れるなら、自分だって入れる」と錯覚しているだけです。
それでも脳は「東大に入れる」と確信して、東大に入る方法を教えてくれます。
だから東大に入るために必要な勉強をコツコツと続けられるのです。

ポジティブな言葉を使い、夢を実現した未来の自分をイメージして、脳にプラスの問いかけをしながら「自分はできる!」と良い錯覚をすることで、いつの間にかその錯覚が現実になっているはず、とこの本は教えてくれます。

個人的にはこれは結構タイプに分かれるかな、と考えています。というのも、以前紹介した本「獲得フォーカス」と「回避フォーカス」という話がありました。人間がどういう錯覚を「快」と判断するかは、フォーカスに分かれると思うのです。私がこのノウハウを実践するなら、自分のフォーカスによって錯覚させるイメージを変えるだろうな、と思いました。

まとめ

以上、今日は「習慣が10割」をご紹介しました。

習慣化することは、なにか目標を成し遂げる時にとても大事な方法論だと思います。
特に私のようないきあたりばったりで人生を決めてきた人間に取って「コツコツ長く続ける」ということはなかなかに苦痛です。
そういう時にこのようにロジカルにノウハウを説明してくれる本はとてもありがたいです。

このビジネス本のご紹介ももう少しで折り返し地点を迎えます。
気づいている方もいるかと思いますが、一つのノウハウに対して、過去の本のノウハウを引用して、補完したりアップデートしたりすることが増えているかと思います。

これが私の考える「ビジネス本の楽しみ方」です。

一日目に書きましたが、基本的に私はビジネス本を知的好奇心を満たす目的で読んでいます。

「この本ではこういう論理からこういう結論を導き出しているが、違う本ではこういう効果からこうなる、と書かれている。つまり、こうなるためにはこういう要素が必要なのではないか。」というような思考実験を重ねて、自分なりの完璧な仕事術ができたら、それは私のこの趣味の一つの到達点とも言えるような気がします。ミステリーを読み漁って、自分なりのトリックを完成させるようなものです。

ということで、今後も過去のブログや本からの引用が増えてくるかと思いますが、どうかお付き合いくださいませ。

それではまた明日、お会いしましょう。