【書評】やり抜く人の9つの習慣 #ビジネス書を楽しもう

2020.12.15

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はじめに

せーのでございます。

誰にも知らせずまったり始めている「ビジネス書」アドベントカレンダー、本日は15日目です。

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本日は吉井雅之著「やり抜く人の9つの習慣」です。

第一日目にやる気が上がる8つのスイッチという本をご紹介しました。この本はそのシリーズ本となります。
「やる気が上がる8つのスイッチ」は人間を8つのタイプにわけ、タイプ別に「やる気が出る」方法や環境の作り方を紹介するような本でした。この本は成功している人たちを心理学的に分析し、その人達が共通で行っていることを体系化して「9つの習慣」にまとめた本になります。

  • 目標に具体性を与える
  • 目標達成への行動計画を作る
  • 目標までの距離を意識する
  • 現実的楽観主義者になる
  • 「成長すること」に集中する
  • 「やり抜く力」を持つ
  • 筋肉を鍛えるように意志力を鍛える
  • 自分を追い込まない
  • 「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する

。。。なんか、普通だな」ビジネス本をよく読む方にはそういう感想を持つ方もいるのではないでしょうか。この本はそういう方を見越したかのようにこう書かれています。

「9つの習慣」の一つひとつは、驚くほどあたりまえのことに感じられるでしょう。それに、それぞれを実行に移すことも、それほど難しくはありません。
しかし、「あたりまえで、簡単に実行できる」ことと「誰もがあたりまえに実行している」ことはイコールではありません。

そう、問題は「これをすればうまくいくことは知っている」ではなく「知っているのにどうしてやっていないのか」を考えることにあります。そこには「思考の流れを把握していない」「心のどこかでできないと思っている」など、心理学的アプローチが足りないために知識を活かせていないケースはないでしょうか。

目標を達成するにはどのように過ごしていけばよいのでしょう。注目する点をご紹介していきます。

目標と現在の自分の差を明確にイメージする

まずは目標づくりです。目標は「具体的に」描くのが特徴です。「金持ちになる」ではなく「月収100万円を超える」という形ですね。

具体的に目標を描いたら「メンタルコントラスト」という作業を行います。
これは心理学用語で「現在の状況を踏まえて、目標への障害は何か具体的に考える」ということです。

例えば「楽しく暮らしたい」と思ったら具体的に「仕事時間を週30時間で終わらせる」と決めるとします。
そして現状とのコントラストを心のなかで考えます。今は週何時間働いているのか、週30時間になったら余った時間で何が出来るのか、家族はそんな自分をどう思うか、同僚はどう思うか、具体的に何が障害になるのか、、、障害が具体的に見えてきたら、その障害は「本当に障害なのか」「なぜ障害になっているのか」を考えます。それによって目標への決意が固まり、具体的に何をすべきなのかも明確になってくる、とこの本は言います。

目標の具体的イメージは「右脳に成功イメージを描くことで錯覚習慣を起こして行動習慣を変えるきっかけを作る」というものですね。12日目にやりました。:
障害の内容を具体的に考えるのは「流れを明確にすることで具体的な要点を絞る」ということです。これは10日目にやりました。
とても論理的な方法ですね。

目標への行動はif-thenプランニングで

目標とそれに対する障害を認識したらそれに対する行動を決めます。この時役に立つ心理学的テクニックに「if-thenプランニング」というものがあります。

これは「もしこうなったら、こうする」という条件と行動をセットで書く、というものです。
脳は「XならY」という文章を記憶しやすいのだそうです。つまりやるべき行動を「XならY」という形に落とし込むことで、脳の深層に定着しやすくし、習慣化させるということです。他にも「いつ」「何を」やるかをはっきり決めておくと良いそうです。

先程の例なら「週30時間」なので、単純計算で一日6時間働く、となります。

  • (if)もしその日の仕事が6時間で終わらなかったら
  • (then)次の日の朝イチにまわして、週トータルではみ出る仕事量を計算する

  • (if)もし6時間後に会議が入ったら

  • (then)事前に6時間業務内に終わるように会議をリスケしておく

  • (if)もし上司が6時間勤務を認めてくれなそうだったら

  • (then)作業を6時間で終えて、2時間机で別のこと(興味のある分野の勉強など)をする

といった感じでまとめていけば、やるべきこととそれに対する障害、障害の対応方法が事前にわかり、実際は意識しなくても行動ができるようになります。

to-date thinkingからto-go thinkingへ

if-thenプランニングで行動を決めたら実際の目標に向けての行動が始まります。

しばらく行動を続けたら「行動に対するチェック」をします。これをフィードバックといいます。
フィードバックは初心者は間隔を開けて、上級者は頻繁に行ったほうがいいそうです。私はだいたい週末です。

ポイントとしては「どこまでやり遂げたかを考える(to-date thinking)」のではなく「あとどれくらいやらなければいけないのか(to-go thinking)」を考える、ということです。
これは心理学の研究結果からto-date thinkingを持っている人は達成感を感じやすく、その場でモチベーションが下がってしまうことが多いから、だそうです。
10キロ痩せる目標があり4キロやせた時は「スタートから4キロやせた」と考えるとやる気が無くなり、「あと6キロで目標達成する」と考えるとモチベーションが維持されるのだそうです。ちょっとわかりますね。

「やればできる」と「やれば簡単にできる」は違う

目標への心がけとして「成功を信じる」というのは心理学的にとても大事な要素だそうです。
習慣づけの話の時に「東大の親を持つと、家でのカッコ悪い姿を見て、こんな人でも東大に行けるなら、と自分が東大に行けることを信じるようになり、結果東大に行けるようになる」という話がありましたが、まさに「信じる」というのは大切なことです。

ただ、ここで重要なのは、成功を信じる時は同時に「目標を達成するには、相応の困難を切り抜けねばならない」と最初から思っていることです。「東大に入るのは大変だ」というのは一般常識としてわかっています。わかった上で「でもうちの親が行けたなら」と覚悟を決めることが大事なのです。ここで「実は東大って楽勝なんだ」と勘違いすると、落ちてしまうわけです。これを「現実的な楽観主義者」と呼びます。

不安に思うと障害を探すようになります。ポジティブで楽観的な人であり、かつ障害を探すような慎重な人が成功を収めるわけですね。

能力は「グリッド」があれば伸ばせる

目標達成には楽観的な考え方が大切だ、という話でした。
もう一つ目標を達成するのに大切な考え方は「自分の能力は伸びる」ということです。つまり「今できなくても、できるようになる」と信じることです。これをこの本では「成長ゴール」「拡張的知能観」と定義しています。

一方「自分の能力は固定されている」「できることを完璧にやろう」という考え方です。これを「証明ゴール」「固定的知能観」と言います。

心理学上では「固定的知能観」は間違い、とされています。努力して成長しない人はいないからです。問題は努力の量や質にあります。その努力、粘り強さ、やる気などを「グリッド(やり抜く力)」と言います。

グリッドを持つにはまず一つの「成功に必要なこと」を理解しておく必要があります。それは

  • 努力すること
  • 正しい戦略を立てること
  • 詳細なプランを建てること
  • 成功を掴むまであきらめないこと

です。これは生まれつきの資質や向いてるか向いていないか、などに左右されるものではなく、やるかやらないか、というくらいシンプルな方法論です。

向いているか向いていないか、というのは脳科学上では「ネガティブな記憶からイメージが作られ、行動習慣が回避行動を起こすから努力できずに失敗する」というプロセスを前回学びました。つまり成長するかどうかは「どう思い込んでいるか、による」という結論が浮かんできます。正しい戦略と詳細なプランを最初に立てて、あとはひたすら努力すれば、自動的にできるようになっているのですね。

「私には無理だ」と言いたくなったら、こう言い換えましょう。

「今の私にはまだ無理だ」と。

また努力についてこの本では面白いことが書かれています。

「興味を持つこと」と「ご機嫌でいること」が、仕事にどう影響を与えるのかについての実験です。
その結果も、とても興味深いものでした。

「ご機嫌でいること」は少なからずエネルギーの維持に貢献していました。
しかし、その度合は、人が興味を持って何かをしているときとは、比べ物にならないほど低かったのです。つまり「機嫌の良し悪し」よりも、「興味の有無」の方が圧倒的に人の活力を高めるのです。

今までの本で「楽しむことが大事」というものが結構有りました。しかし心理学的アプローチで言えば「楽しむこと」より「興味を持つこと」の方が大事なんですね。

意志力を鍛える

人には筋肉のように「意志力」というのがあるそうです。そしてそれは「これまでやったことのない、気の進まない事を、自分の意志でやってみる」ことにより鍛えられるのだそうです。
腹筋、禁煙、間食をやめる、背筋を伸ばす、、、何でも良いのでif-thenプランニングに落とし込んでやり続けることで「慣れ」が発生し、苦ではなくなるのだそうです。そうやって意志力を鍛えるのだとか。

そしてこの本では意志力について「筋力と似た性質があり、様々な部位に分かれる」「激しいワークアウト後に消耗して力を入れることができないように、ストレスにさらされたり、多くの意思決定が必要だったり、自分の印象を良くしようと思ったりすると、意志力は少しずつすり減るが、時間が経てば回復する」と書かれています。

これは以前「集中力」の話の際に出てきた「ウィルパワー」の考え方に似ていますね。そういえばウィルパワーを鍛える、という話のときにも「気づいたら意識的に背筋を伸ばす」という話がありました。この本にも

「意志力と筋力の共通点」は、どちらも定期的に刺激を与えることで、どんどん強くなるということです。
気がついた時に背筋を伸ばす、といった簡単なことでも、続けることで自己抑制の力を高める事ができます。

と書かれています。ちなみに研究結果で意志力を高める効果があったのは

  • 好きなスイーツを食べるのをやめる
  • 汚い言葉を使うことをやめる
  • 聞き手ではない方の手を使って生活する
  • 「私は」で話すことをなるべく避ける

というものだそうです。

否定的な表現をしない

目標を見つける事と同じくらい、それをどう表現するのか、は重要だとこの本は指摘します。

人間は「やめたいこと」を考えると、頭がそのことばかり考えるようになるそうです。 上の「if-thenプランニング」も

  • (if)もし出かけた先で買い物をしたくなったら
  • (then)絶対に買い物をしない

というような否定的な表現で目標を立てると、そのパターンは他に比べて効果がかなり小さくなったり、逆効果になったりするのだそうです。なので「〜しない」という目標は「〜する」という目標に置き換えることが大切です。

  • 安請け合いしない => 一日考える

という形で目標は代替するようにしましょう。

まとめ

以上、今日は「やり抜く人の9つの習慣」をご紹介しました。

このシリーズはとても理論立てられていてすっと入ってくるものが多いと感じます。今回も実践的で役に立つものでしたね。

それではまた明日、お会いしましょう。