【書評】机に向かってすぐに集中する技術 #ビジネス書を楽しもう

2020.12.18

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はじめに

せーのでございます。

誰にも知らせずまったり始めている「ビジネス書」アドベントカレンダー、本日は17日目です。

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本日は森健次朗著「机に向かってすぐに集中する技術」です。

このアドベントカレンダーでも何回か出てきた「集中力」に関する話題ですが、著者の森健次朗さんは「株式会社 集中力 代表取締役」という、逃げ道なしの会社の社長さんです。元々ミズノにてスポーツウェアの開発をされていた方で、シドニーオリンピックで注目を浴びた「サメ肌水着」の発明者でもあります。

そんな森さんが書かれたこの本の特徴は「とにかく具体的である」こと。
もちろん理論としてもしっかり研究して書かれているのですが、それをどう実践したら良いのか、集中する方法論がぎっしり書かれています。2016年の本なのですが、私も久々に読んでみてすぐに実践できるものばかりで、「手っ取り早く集中する方法を知りたい」という方にはピッタリかと思います。

ではそんな超実践的な「目の前の事にすぐに集中できるテクニック」をご紹介します。

「集中する」とは

まずこの本では「集中する」ということはどういう事かをこう定義しています。

「一時に、一点だけに全パワーを集めること」

いわゆるスポーツの世界でいう「ゾーンに入る」ことを「集中する」と定義しています。つまり「集中する」には「眼の前の一点に対してパワーが注がれる」ようにすればよいわけです。

そしてその方法の前提として「リラックスする」ことの重要性を説いています。

できる限り強い力を一点に集中させたいのであれば、逆説的ですが、「力を入れすぎない」ことがコツになります。

力を込めて一点に集中していると、それ以外の作業のときにも集中していた物事が頭に浮かび、肉体の衰弱を招くのだそうです。大事なのは自分が考えをコントロールしていることで、考えに自分が支配されることは不健全なのですね。なので、力を入れずに適度にリラックスした状態こそが適切な集中力を発揮できるのだそうです。

そしてそのリラックスのために必要なことは「ルーティンを作る」ことです。

よくスポーツ選手がルーティンを多用しているイメージがありますね。あれはリラックスして結果が出ている練習時に行っているルーティンを本番でも行うことによって身体をリラックス状態に持っていって本来のパフォーマンスを発揮させやすくするためです。
その方法を取り入れて、集中する前に決まったリラックスするルーティンを行うことにより、どんなときでも一瞬で集中できるようにすることをこの本では勧めています。具体的なリラックス方法はこちらです。

姿勢を正して鼻呼吸する

姿勢を正すと集中できる理由は、姿勢を正すことにより鼻呼吸となり、鼻から吸った冷たい空気が脳を冷やすためクリアな考えが保たれるからです。
正しい姿勢の作り方は

  • イスに浅く座る
  • 利き手を頭に載せ軽く頭を押さえつける
  • 頭を押さえつける力に反発するように顎を引いて背筋をグッと伸ばす
  • 利き手を頭の上から下ろす
  • 両肩をグッと上げて、2〜3秒緊張した状態を保つ
  • 脱力し、両肩をストンと下ろす

これでできた姿勢が集中しやすい「正しい姿勢」となります。

マイナス x マイナス = プラス法

緊張する時にあえて緊張する負荷をかけることで緊張状態を解く方法を「マイナスxマイナス=プラス法」と言います。
今回はリラックスするための方法なので、あえて緊張するために肩に力を入れるのだそうです。

  • 両肩をグッと上げる
  • さらに両肩をグッと上げる
  • 肩をストンと落とす
  • これを2〜3回繰り返す

5・3・8深呼吸

次は深呼吸です。緊張すると呼吸が速く浅くなるので、リラックスするためには深呼吸が欠かせません。正しい深呼吸は

  • 肩をギュッと上げて、ストンと脱力する
  • 膝の上に両手を置き、手のひらを上に向ける
  • 軽く目を閉じる
  • 鼻で5秒間、大きく息を吸い込む。キレイな空気を細胞の隅々まで届けるイメージで
  • 3秒間、息を止める。
  • 8秒かけて口から息を吐く。イヤな気持ちや身体の中の汚れた空気を吐き出すイメージで
  • これを3回繰り返す

この5,3,8という秒数は個人差があるそうなので、一番自分が気持ちいい秒数で行ってみてください。
ちなみにこれを呼吸に集中して5〜10分続けると「瞑想」となります。瞑想の効果は様々な分野で証明されているので、時間のある方は是非やってみてください。

視野を広げる

人間は緊張すると視野が狭くなります。視野を広げることで余計な力が抜け、リラックスすることができます。

  • 両手の親指を立てて顔の前に出す
  • 右親指の爪に両目の視点を合わせる
  • 右爪に視点を合わせたまま指をゆっくり右側に移動する
  • これ以上指の爪が見えなくなる、というところで指を止める
  • 同じことを左も繰り返す

以上「姿勢を作る」「肩を上げ下ろしする」「深呼吸する」「視野を広げる」という流れを作業する前のルーティンとすることで、リラックスした状態を作り上げることができます。

集中できない人は目線が定まっていない

著者は様々な経験により「集中できない人は目の前のものを見ているようで実は全く見ていない」ということを見つけました。要は目線が泳いでいるのです。
逆に言えば「眼の前のものに目線をフォーカスすることで集中力がみなぎってくる」ということになります。 そのためにこの本では「集中カード」というものが入っていまして、それをじっと見ることで集中できるようになっています。

世の中にはこのような「集中するためのカード」というのが結構ありまして、「集中カード」で検索すると色々出てきますので参考にしてみてください。
集中カードの使い方は基本みんないっしょで

  • カードの真ん中にある点を20秒間見つめる
  • ゆっくり目を閉じる
  • 瞼の裏にダイヤの残像が出てくる
  • 残像が消えるまで目をつむる
  • 残像が消えたら作業を始める

というものです。カードがなくても「手のホクロをじっと見る」「文章の初めの5文字を1文字ずつ1秒ピントを合わせて視線を固定させる」といった方法でも目線がフォーカスできるのだそうです。

視覚以外の五感で集中する

視覚は情報処理の8割を担っているので一番重要なのですが、それ以外の感覚を使った集中法も合わせて行うと効果的なのだそうです。

  • テニスボースを2個積む(触覚)
  • 目を閉じ、周りにある音を3つ認識できたら目を開ける(聴覚)
  • 柑橘系のツンとした匂いをかぐ(嗅覚)
  • ご飯を最初の5粒まで1粒ずつ食べる(味覚)

このうち「テニスボースを2個積む」というのは視覚的にも「テニスボースが詰めた=集中できている」というわかりやすいサインになるので良いのだそうです。ちなみに私はテニスボースは積んでいませんが、必ず「手帳に文字を書く」ことにしています。自分の納得行く字がかけてる時は集中できています。逆に気が散っている時は全く読めないような字になってしまうので、それをバロメータにしています。

また、匂いが集中を導くメカニズムは脳科学で証明されています。

  • 匂いをかぐと鼻腔の上部にある嗅上皮に香り成分が付着する
  • 香りが電気信号に置き換えられて脳の大脳辺縁系に伝わる
  • 大脳辺縁系は喜怒哀楽の感情を司っているので、そこで「いい香り=リラックス」が結びつく
  • 視床下部にその判断が伝えられ自律神経やホルモンの調節がされて身体の緊張が解ける

ですので携帯のアロマなどを持ち歩いておくと香りがスイッチとなって集中モードに入ることができます。

身体を適度に休ませる

集中するには体力ももちろん必要で、また身体が思う通りに動くためには全身に酸素が行き渡っていることが重要です。
人間の全身に効率よく酸素が回りやすい心拍数は

「170〜180」- 「自分の年齢」

だそうです。朝、ジョギングなどで軽くこの心拍数まで上げておくと全身が目覚め、集中しやすい身体が整います。

また身体をリフレッシュさせるために「15分仮眠」も有効だそうです。これは「パワーナップ」としてよく知られた方法かと思います。説によって18分だったり20分だったりしますが、共通して言えるのは「30分は超えない」ということです。理由としては、昼寝が30分を超えるとノンレム睡眠に入ってしまうので、起きた時に逆にスッキリしない、ということが上げられます。

感覚を遮断する

強制的に集中状態を作り出すためには「五感からの情報を遮断して制限する」ということが有効です。

例えば「音楽や雨の音などをイヤホンで聞く」ことは他の音をカットすることで集中しやすくなります。
また「机をパーテーションや本などでしきる」ことで、目から入ってくる情報を制限すると集中しやすくなります。これは競馬の馬がつけるブリンカーに似ています。私もどっぷり集中したい時はヘッドホンをつけて、パーカーを頭からかぶって仕事したりするので、気持ちはよくわかります。

目標より目の前のこと

集中、という観点で考えると「目標を立てること」は必ずしもいいことではないそうです。
目標設定をすることで具体的な成功イメージが浮かぶのでモチベーションが上がります。
問題はそのモチベーションをきっかけに作業を始めてしまうことです。モチベーションはいわば「やる気」なので、安定していません。やる気がなくなれば集中が切れてしまう、ということになります。

目の前のことに集中するためには、このような遠い目標が集中を削ぐ原因になったりもします。目標から現在やろうとしている仕事まで正しくブレイクダウンできないのであれば、むしろ目標は持たないほうが良い、とこの本は言います。

また私達が理解しないといけないのは「作業を始めることでモチベーションができる」ということです。
目の前の小さいタスクを気分が乗っても乗らなくてもとりあえずやり始める。そうするとできた頃には「もう少しやりたい」という気持ちが芽生え、結果的に目標に近づいていく、という順序が良いのですね。そのためにも上のようなルーティンを使ってすぐに集中できる環境を整えて、まずは手をつけていくことからはじめましょう

まとめ

以上、今日は「机に向かってすぐに集中する技術」をご紹介しました。

今回はかなり実践的な内容でした。すぐにでも始められることが多いので、ぜひやってみていただきたいと思います。

それではまた明日、お会いしましょう。